2011/05/08

四国旅行1/3

一日目は名古屋〜高知

名古屋を朝の3時に出発し、岡山経由で高知を目指す.朝7時、瀬戸大橋の中間にあるPAで休憩.

それにしてもここから見る瀬戸大橋はすごい.橋もすごいが、途中の島におりるためのループの構造美っていったら、建築の比ではない.メガストラクチャーの力強さって、建築よりも土木に多く感じるのは規模のためだろうか.それとも構築するためのプロセスにあるのかなぁ.
で、そのPAにある橋の吊りワイヤーの実寸模型.頭ではしくみを理解していたが、実際にみると結構衝撃.

高知のアンパンマンミュージアムを最初の目的地にしていたが、途中「龍河洞」なる鍾乳洞が近くにあることを知り、そちらにハンドルを切る.この自由さが旅の醍醐味.

で、到着するなり、駐車場にある公衆トイレのデザインに興奮する.機能面はいささか疑問だが、そんなことはおかまいなし.見事なシンメトリーでかつ良くとらえるとフラクタルなデザイン.建物の規模といい、それに対するスラブ厚さといい、すごくバランスのいい建物.
ちょっと奥に進むと、渋い建物.よく地方の庁舎にある、RCによる日本建築の模倣かと思いきや、構成主義のような非合理的な造形がみられる.DOCOMOMOレベルじゃないのか、これ.「龍河洞国際観光会館」なる建物らしい.調べたけど詳細は不明.で現在は使われている様子もない.もったいない.
そして、鍾乳洞.自然の作る美しい流れの形.

出口にある博物館.こちらは正統派の建物.日本家屋の持つ屋根の力強い造形がRCの構造的強さと相まって、ダイナミックな印象.納まりもシンプルなため、よけいな線が出来ず、よりその造形を強調している.そしてキレイ.
吹き抜けの曲面がセクシーで、かつ石張りがかっこいい.

思いがけない発見でさっそく興奮しながら、本来目的地のアンパンマンへ.

全体はシンプルはボックス.内部は中央の吹き抜けを挟み込むように諸室があり、最上階に大きな展示室.いまとなっては際立った部分はないが、いちいちかっこいいことは確か.写真は自由に取れるが、ほとんどが著作権に引っかかるため公開できず.それにしても、アンパンマンのチカラはすごい.

すぐ近くにはアンパンマンミュージアムと同じく、古谷さんのNASCA設計の「詩とメルヘン絵本館」がある.

ザ・ナスカ、なデザイン.始めてNASCAらしい建物に触れることが出来たが、パネルとスリットを連続させるデザインは、外身ではなく、内部空間に入って始めて真価が発揮されることを実感した.ともすると、チープで野暮ったいデザインになりそうなのだが、絶妙なパネル割にて、豊かな空間構成を実現している.簡単にマネできそうだけどマネできない、職人的な技.

アンパンマンを後にし、高知市内へ車を走らせる.まず目指すは内藤廣設計の高知駅.

全体をみる.駅ホームを上部に上げ、地上階は通り抜け可能なコンコース.普通の"線路下ビル"に木鉄のハイブリットな屋根がかかっている....のみ.分かりやすい.鉄骨が昆虫の足みたい.以外と小規模.
で、大屋根の足下はというと、本実模様のRCが受けており、上部構造と同様に均一に整列している.教科書的な半屋外空間であり、質といい、広さといい、空間からは何か高知駅前に新たな場所性を生み出すような気配は感じるものの、実際はそんな
素振りを見る事はできない.もう少し目的を持たせた空間とすべきだっただろうか.
上部に上がり、ホーム.特筆すべき所はない.が、とてもキレイ.これもお手本のような構造の見せ方をしている.シンプルで分かりやすい構造だからこそ、ディテールが意匠に及ぼす影響は大きくなるわけだが、さすがそこは分かってらっしゃる.都市に対して、爆発的な影響は及ぼさないものの、こんな建物が長く残るのかもしれない.

駅を離れ、車を走らせる事15分.ちょっと前に学会賞(だったかな?)を受賞した、こちらも内藤さん設計の牧野植物園・記念館へ.

小高い山にある植物園.ヘアピンカーブを抜けて到着.
アプローチから建物を見る.軒先が日本建築の様に低く抑えられている.この時点でその特徴的な屋根形状が伺える.
で、メインエントランス前の庇ディテールを見る.別に難しいことはやっていない.だからこそ、部材寸法のバランスが重要になってくる.しかも余計な接合部分は見えてこないような納まりがステキ.


内部.中庭を取り囲むように大屋根を架け、必要な展示室やその他諸室はさらに壁で区切られている.ここでも構造の木や鉄が美しく構築されている.光の捉え方は違えど、人に近い空間に感じる部分が、少しリートフェルト的な空間だなと.ただし、集成材を利用した力強い昇り梁や、低く抑えられた軒先は、やはり日本建築的なバッファを作りだしており、外部と内部を決定的に区切るリートフェルトの建築とは違う.
大屋根内部から中庭側を見ると、中央に円形の吹き抜けがあり、地下の図書資料室と接している.それにしても(3度目だけど、)この軒先高さの作り出す絶妙な境界がたまらない.
中庭に出て、振り返るとこの屋根.ジョイントの位置を均一にせず、中庭・屋根の湾曲したボリュームを強調している.こいつはかっこいい.
内部は撮影不可のため資料はないが、こちらもすばらしい空間.蛇足的なデザインをせず、純粋に建築をデザインし、建築の美しさを表現できているため、展示の邪魔もせず、うまく一体化できている.
内藤さんの作品はどれも、全体の構成や構造はシンプルに分かりやすく作られている(といっても、前述したようにそれが美しく見えるためには技が必要)のだが、それにプラス、空間にコントラストを与えるような要素を加える事により、より豊かな場所としている気がする.例えば、素材であったり、光であったり、天井高さであったり.それらは元来日本にあったセンスであり、伝統の延長にありつつ、さらに洗練した建物であるからこそ、今見ても10年ぐらい前の建物とは思えないぐらい、完成度が高く、また愛され続けていることができる建物になっている.また、展示の内容もとてもすばらしいものであった.既に一日目にして、建築欲がほとんど満たされた感覚.


それにしてもいい天気.建築見学日和、旅行日和.
こんな時のアイスはおいしい.トマトのアイス.うまいけど、これで500円.

高知市を後にし、須崎市経由にて高知県と愛媛県の県境の町、梼原へ.ここでは隈作品を見る事が目的.
車を走らせること2時間で到着.もう日は落ちている.今日の宿は早速隈研吾氏の近作である「道の駅ゆすはら」.


メインである道の駅機能はすでに閉館.宿泊ゾーンとは吹き抜けを介して繋がっているため、様子を伺う事はできるが、暗くてよく分からず.明日に見る事にし、町を少し散策.


町のメインロード.夜の6時半.人っ子一人いない.車も通らない.そして手書きのバスのりばが微笑ましい.そして道沿いにある天狗も微笑ましい.

近くのスーパーでカップラーメンを購入し夕飯とする.寝不足と疲れのため、8時ごろに落ちる.

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